2024年01月20日

GCTerminalのUHM機能を活用する - TX5Sに向けて

先日、有志によるIO-117における行動規範が提案されました(他の言語版もお読みになりたい方はこちらへ)。まずはこれをご一読いただいた上で、本記事の続きをご覧ください

【参考】我が家(PM85rl)とTX5Sとのパス


(序)UHM(yoU Heard Me)機能とはこちらの説明を意訳)

UHM機能は、IO-117/Greencubeのパスをもう少しみんなが楽しめるようにするべくGCTerminalに搭載されました。と言うのも、この衛星のフットプリントは広く、また人気があることから、多くのユーザーが同時に衛星を利用することが多いので、時にはとても混雑し、メッセージをデジピートさせることが叶わない時があるからです。

UHMは、この混乱を少しでも改善しようと努めています。問題の一つは、相手局が応答するまで、ユーザーが同じメッセージを何度も何度も送信することです。このユーザーは、相手局が実際に受信できたのかどうかを知る由がないので、QSOできる機会の逸失を恐れるあまり、応答があるまで相手局を呼び続けるのです。

UHMは、混乱の改善の手助けをしようとしています。
こちらはUHMを説明する動画です。

ある局(以下「A局」)が交信したい局(以下「B局」)を呼ぶと、A局は自分のメッセージが実際にB局で受信されたかどうかを確認することができます(A局のコールサインはB局のCallingMeリストに入ります)。A局がB局のコールサインの横にチェックマークを確認することができれば、B局が実際にメッセージを受信したことをA局は知るので、A局は同じメッセージを何度も送信し続ける必要がなくなります。そしてA局は、あとはリラックスしてB局からの返信を待つことができるのです。

UHMは「インターネットを経由する無線」ではありません! 有効なQSOのための手順は、UHMがなくても変わりません! UHMの有無に関係なく、相手局からの"RST"、"GRID"、"73"などが必要です《訳者注:現在はRSTの送受は不要と行動規範では呼びかけています》。

UHMが行っているのは、呼んでいる局が同じメッセージを何度も繰り返さないようにすることです。

相手局があなたのコールを1回ではなく15回受信したからといって、QSOがより有効になるわけではないのです《訳者注:CallingMeリストはLOSまでの時間の短い局が上位へ来るようソートされるので、何度呼んでもリスト中におけるあなたの順位はそう大きく変わらない》。

こちらもお読みください:
 UHMの運用と動作原理(Jeff KI0KB)
 UHM - ストップサインとその対処法(Jeff KI0KB)

あなたがGCTerminalを用いてメッセージを送信して衛星がそれをデジピートし、あなた自身で無事受信できると、GCTerminalは、oscarwatch.orgサーバーにあなたの呼び出した局がこのメッセージの受信を報告しているかどうかを問い合わせます。この問い合わせを送信時に行うか、受信時に行うかは、設定で選択できます。私(=OZ9AAR)は "Ask server for UHM on digipeat" 設定を使うことをお勧めします。設定で入力できるディレイは、送信またはデジピート後にサーバーへ問い合わせを送信するまでの秒数です。

oscarwatch.orgサーバーからあなたの元へ返信が届くと、相手局コールサインの横にチェックマークかストップサインが表示されます。チェックマークは相手局があなたのメッセージを受信したことを、ストップサインは受信できなかったことを意味します。またチェックマークもストップサインも表示されない場合は、相手局が統計情報をサーバーに転送していないことを意味します("Enable forwarding of statistics to server"を無効化している、《訳者追記:もしくは旧版のGCTerminalや他のターミナルソフトを用いている》)。

CallingMeリストには、UHMステータスも反映されます。特に "S73" 列には、あなたが相手局へ送信した "73" メッセージに対するチェックマーク/ストップサインが表示されます。チェックマークがあれば相手局は "73" メッセージを受信したことを、ストップサインは受信しなかったことを意味します。なおクエスチョンマークが付いた場合は、相手局が統計情報をoscarwatchサーバーに転送していないため、UHMによるメッセージ受信の可否が判断できないことを意味します。


(1)必須事項

- GCTerminalをインストールしたパソコンは、インターネットに常時接続
- Windows7上では、TLS1.2を有効化すること(対処法はこちら


(2)GCTerminalの最新版(1.0.0.85)をインストールする

- OZ9AAR Carstenさんのサイトからダウンロードしてインストール
- 1.0.0.85(UHM機能など)の簡単な解説は、こちらの記事にて
- GCTerminalのアップデートの方法は、こちらの記事の「(2)インストールする」にて
- GCTerminalのログに過去のデータを移す方法は、こちらの記事の「(7)log.adiへグリッドスクエアを追加」にて


(3)UHM機能を有効にする

- Setting>Generalタブ
  「Enable forwarding of statistics to server」にチェックを入れる(必須)
- Setting>UHMタブ
  「Enable UHM」にチェックを入れる(必須)
  「Ask Server for UHM on digipeat」にチェックを入れる(推奨)


(4)画面を適切に設定する

- Dupelistウィンドウ内にあるEle列とUHM/LoTW列が見えるようにする(画像参照)
- Ele列: リスト中の局におけるGreenCubeの仰角
  ⇒ リスト中の局の仰角がマイナス3度以下になったら、呼ぶのを止めよう
- UHM/LoTW列: それぞれの対応状況。チェックマークは対応済み・ストップサインは非対応
UHM-1.jpg


(5)UHM機能の動作の仕組み

UHM-4.jpg
- 画像は、JQ1TIV局を呼んでQSOした時の様子
- 1回目のコールでは、相手局コールサインの右横に「ストップサイン」
  ⇒ 相手局が受信できていない
  ⇒ 相手局のCallingMeウィンドウに自局コールサインが載っていない
  ⇒ ストップサインを確認してから、再び呼ぶようにする
- 2回目のコールでは、相手局コールサインの右横に「チェックマーク」
  ⇒ 相手局が受信できている
  ⇒ 相手局のCallingMeウィンドウに自局コールサインが載っている
  ⇒ これ以上のコールは不要(CallingMeウィンドウはLOSまでの時間の短い順にソートされるので)
- ここでのポイントは、「自局のアップリンクが受信できていること
- 行動規範の第1項と第5項に則って運用したい


(6)UHM機能を活用した移動局やDXペディション局とのQSO

- UHM機能を用いた場合、行動規範に即すと、以下のやり取りとなる

  JK2XXK/5 > CQ PM62
  JI2ZLX > JK2XXK/5 PM85
  JK2XXK/5 > JI2ZLX R73 PM62
  JH5ZAB > JK2XXK/5 PM63
  JA2YJO > JK2XXK/5 PM85
  JK2XXK/5 > JH5ZAB JA2YJO R73 PM62

- QSOの大まかな流れは、フロー図のとおり
  UHM-5.jpg
- ポイントは、「JK2XXK/5のR73を受信したら、73やTUなどを返さない
  ⇒ 移動局側は、自局のメッセージ(上記例だと「R73 PM62」)が受信できた時点でログに載せる
  ⇒ 自局メッセージの呼んだ側での受信の可否は、CallingMeウィンドウの"S73"列で確認できる
  ⇒ 行動規範の第14項にもあるように、移動局への73やTUなどは必須ではない
  ⇒ むしろQSOしたいと送信している他の局にとっては、妨げにしかならない
  ⇒ そして移動局による更なるメッセージの送信、ひいては更なるQSOの妨げにもなっている
- 海上移動局(JA9KRO/MM・UT1FG/MM)は、呼んだ側から73やTUを送らなくてもLoTWでCFMできる

【参考】こういうケースはどう捉えるのか?
UHM-2.jpg
- 移動局側から同じメッセージが複数回上がるケースがある
- これは、最初のメッセージの自己受信ができなかったので再送した…ということ
  ⇒ 相手局への73などの再送を要求するものではない
- 繰り返しになるが、移動局は自局メッセージを自分自身で受信できた段階で相手局をログに載せる
  ⇒ 自分自身が受信できた、イコール「相手局も受信できただろう」という判断基準
  ⇒ 現在はUHM機能で「受信できただろう」が客観的に判断できる


(7)TX5SとのQSOを望む方々へ

- TX5Sは、GCTerminalのUHM機能を利用してオペレートします
- したがって呼ぶ側も、GCTerminalの最新版・1.0.0.85を用いるのがベストの選択
- UHM機能の仕組みを理解し、無駄な送信をしないように
  ⇒ 特にTX5Sへの73は絶対に送信しない
- 行動規範に則り、呼ぶ際のメッセージはグリッドのみとする
  ⇒ デジピータでのQSOで599を付けるのは、行動規範にもあるように無意味です
  ⇒ みんなでスマートなQSOをすることが、より多くの方がTX5SとQSOできることに繋がります
  ⇒ 衛星やQSOの特性を踏まえ、みんなで協力し合うことが、いま求められています
  ⇒ みんなが見ている中での「自分さえ良ければ」というオペレートは、いかがなものでしょう
- TX5Sの運用は、UHM機能の試金石であるとプロジェクトメンバー間では認識しています
  ⇒ 節度ある運用を心掛けることで、1人でも多くの方がTX5SとQSOできることを願っています

この記事を書いている最中、17mのCWでTX5Sの運用が始まったとの一報に接しました。
もうすぐですね! FB DX on GreenCube!
posted by きこり@JH最大の難所 at 14:27 | 岐阜 ☔ | Comment(0) | TrackBack(0) | サテライト | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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