2024年07月07日

GCTerminalで効率よくQSOする

OZ9AAR Carstenさんの "Greencube Terminal"(以下「GCT」)で効率よくQSOするためのTipsを紹介します。更によい方法がありましたら、ぜひ教えて下さいhi。

まずはこちらに一通り眼を通してから

IO-117プロジェクト有志が提案する、IO-117における行動規範(PDFファイル)



これより以下は、現時点(2024年7月13日時点、以下同じ)での最新バージョン(1.0.0.91)に関する記述です

GCTerminal-00.jpg
青枠 Traffic窓
赤枠 CallingMe窓
緑枠 Dupelist窓


(1)アップリンクしやすくするためetc.に覚えておきたいこと

1-1 アップリンクのメッセージ構成は次のとおり(文字は全て半角)

@ ヘッダ 4文字
A コールサイン 自局+相手局の文字数+2文字
B 識別子? 11文字
C 遅延秒数 7文字プラス秒の桁数分
D メッセージ メッセージの文字数分プラス3文字
※上の各項目は、当方が「こんなものだろう」と適当に分類しています(汗

例:JK2XXKが遅延秒数12秒でKH0/JI2ZLXに"PM85"というメッセージを送信
@ 4文字
A 6+10+2=18文字
B 11文字
C 7+2=9文字
D 4+3=7文字
上記の例では、トータルで 4+18+11+9+7=49文字(正確には49バイト)を送信


1-2 1文字当たりの送信時間は約20msec

先の49文字を送信するのに、49×20=980msec、つまり1秒弱を要する
これに後述の、soundmodemの設定値(TXDelay・TXTail)が加わる


1-3 GCTのメッセージで重要な文字列は「グリッド(4桁)」と「73」

@ グリッド:
 - 受信したグリッドから当該局の仰角やLOSまでの時間を算出
 - LOSまでの時間を元にCallingMe窓のリストをリアルタイムで並び替え
 - ADIFへ転記の際、当該グリッドを自動的にADIFへ取り込む
 - ログを参照させている場合、このグリッドがWKD済みかどうかを判定するデータ
A 73:
 - GCTではQSO完了を意味する文字列として認識
 - CallingMe窓内のS73列・R73列に反映される
   S73 自局の73を相手局が受信するとチェックが入る(相手局のUHMがONのとき)
   R73 相手局の73を受信すると受信時刻が入る
 - 相手局からの73を受信した時刻をQSO時刻としてログに記載


1-4 遅延メッセージは、DXCCやVUCC等のアワードに無効

【ソース】TQSL Configuration update?


1-5 まとめ 〜以下を念頭に設定やメッセージを考える〜

- GCTのメッセージでは「グリッド(4桁)」と「73」が重要な意味を持つ
- 送信時間は1msecでも短く
- 遅延メッセージにしない <*1>
- UHMは旧バージョンだと機能しないので常に最新バージョンを使う(入手先はこちら

*1 GCTでは遅延メッセージ(遅延時間は確か16秒以上)を受信すると、Traffic窓内の該当メッセージを含む行には灰色の背景色が付く

−…−

(2)soundmodemの設定

Settings>Modems>Modem type ch A

- TXDelay(初期値400msec)
できるだけ少なく。プリアンプなしなら20〜25、遅延回路を入れているのならその分だけ加味

- TXTail(初期値50msec)
当方は1。0でもいいらしい

−…−

(3)GCTの設定(1.0.0.91を例に説明)

※[]内は、@チェックの有無、A入力する数値や文字列、を意味する

3-1 Settings>General

GCTerminal-01.jpg

- My call: [運用時のコールサイン] <*2>
- Grid: [グリッドスクエア(6桁)] <*3>
- [無] Use GPS for grid <*4>
- [有] Show TLM msg in traffic window
- Delay between multiple contacts when logging: [2] <*5>
- [有] Do not insert call into CallingMe again after Log
- [無] Hide traffic from delayed messages
- [有] Enable forwarding of data to server
- [有] Enable forwarding of telemetry to SatNOGS <*6>
- [無] Enable Sheriff
- [有] Sort CallingMe on time to LOS

*2 /が使用可能(例:9A/S58J/P、JK2XXK/5)
*3 入力されたグリッドを元にGCTは自局に関する各種計算を行う他、OscarWatchに自局の位置情報が正確に反映される
*4 PCに接続したGPS受信機の緯度経度情報を参照する場合は[有]。しかしグリッドの境界線上・交点上での運用時は、GPS受信機を接続していても[無]を強く推奨
*5 マルチアンサー機能(複数への一括応答)を使う場合、ログの記録漏れが発生する可能性があるため、[0]にしないこと
*6 インターネット接続が不安定な場合は[無]


3-2 Settings>TLE data

GCTerminal-02.jpg

- [無] Use local TLE data <*7>
- URL for TLE: [http://www.amsat.org/tle/current/daily-bulletin.txt]

*7 インターネット接続が不可(または不安定)の場合は[有]とし、Filename for local TLEにTLEを記述したファイルの保管先を絶対パスで指定(画像参照)。運用地におけるインターネット接続の可否が不明な場合、予めTLEをローカルに保存しておき、それを指定すると良い。保存先は、マイドキュメント内に生成される'Greencube Terminal'フォルダの中にすると良い


3-3 Settings>Sound(Windows 10/11で有効 <*8>

3-3-1 Voice settings
- [有] Enable new callsign message
- [有] Enable message for my call
- [有] Enable message for COSI match
- [無] Enable messages from Sheiff Wyatt

3-3-2 Pass alarm announcements
- [有] Enable AOS messages

*8 この機能を有効に活用するには、Rigへ接続するサウンドカードは外付け(IC-9700内蔵のUSBサウンドカードなど)が望ましい(PC内蔵サウンドカードはPC内部のノイズを拾いやすく、デコードに影響を与える恐れがあるため)。Windowsのサウンドの設定「アプリの音量とデバイスの設定」でシステム音はPC内蔵サウンドカード、soundmodemは外付けサウンドカードを指定する


3-4 Settings>Logging

GCTerminal-03.jpg

3-4-1 ADIF File Logging/Search
- [有] Enable logging to ADIF file
- Filename for ADIF: [ADIFファイルの保管先を絶対パスで記述]
- [有] Search ADIF file for call/grid

3-4-2 TCP logging/Search (N1MM etc)
- [有] Enable TCP logging <*9>
- [有] Keep port open

*9 TCP経由でログを別ソフトへ渡す場合。HAMLOGへは、JT-Linkerを介することでログの転送が可能。当方はTCP経由でJT-LinkerとN1MM+の両方へ同時にログを転送


3-5 Settings>QRZ lookup

- [有] Show US State from QRZ in Dupelist
※[有]にしたらUsername・Passwordも記述すること


3-6 Settings>UHM <*10>

GCTerminal-04.jpg

- [有] Enable UHM
- [有] Ask server for UHM on digipeat
- [有] Voice messages for UHM heard
- [無] Voice messages for UHM NOT heard

*10 UHM - yoU Heard Meの略。多くのユーザーが同時にアップリンクすることで発生する混乱を少しでも改善すべく導入された、相手局による受信の成否をサポートする機能。要インターネット接続。自局メッセージを相手局が受信すると、Traffic窓内にある相手局コールサインの右隣にチェックマーク、受信しないとストップサインのいずれかが付く。UHMのアップデートに伴い、現時点ではGCTの1.0.0.90以降のみ対応。なおGCTのアップデートは、@ 旧版GCTをアンインストール、A 新版GCTを旧版GCTのあったフォルダへインストール、で旧版GCTの設定をそのまま引き継いだアップデートが可能

−…−

(4)GreenCubeにおけるQSO例 〜通常の交信〜

双方UHMがONという前提
※【再掲】GCTでは「グリッド(4桁)」と「73」が重要な意味を持つ
※【再掲】送信時間は1msecでも短く
※【再掲】遅延メッセージにしない

JK2XXK > CQ PM85
JH5ZAB > JK2XXK PM63
JK2XXK > JH5ZAB R PM85 73
JH5ZAB > JK2XXK R73 ←これをJK2XXKが受信できた時点でログに載せる(UHMで確認可)

- 欧米ではグリッドの交換が一般的
- RSQはデコードできたら599とみなすのが一般的なので省略
- 最近は海外のWAJA/JCC/JCGハンター向けに「JK2XXK > CQ PM85 1906」などとする例が多い

これをショートカットに登録すると、こんな感じ
ショートカット上段をRun、同下段をS&Pに振り分けてみた

【F1】
Label Run
Message [MYGRID4]
To call CQ
TX Delay 0

【F2】
Label GL73
Message R [MYGRID4] 73
To call
TX Delay 0

【F6】
Label S&P
Message [MYGRID4]
To call
TX Delay 0

【F7】
Label R73
Message R73
To call
TX Delay 0

GCTerminal-05.jpg
定型文をショートカット(画像ではF2)に登録した様子
各ボタンの上で右クリックすると、このウィンドウが出る

《参考》定型文中で使えるマクロ
[MYCALL] Settings>General の 'My call' で設定した自局コールサイン
[MYGRID] Settings>General の 'Grid' で設定した自局グリッドスクエア
[MYGRID4] Settings>General の 'Grid' で設定した自局グリッドスクエアの上4桁
[MYELE] 自局の現時点での仰角(小数点以下第1位まで)
[MYELEn] 自局の現時点での仰角(小数点以下第n位まで、n=0 to 2)
[EXTRAINFO] Settings>General の 'Extra' に記述した文字列

−…−

(5)GreenCubeにおけるQSO例 〜Rover局やペディション局との交信〜

双方UHMがONという前提
※【再掲】GCTでは「グリッド(4桁)」と「73」が重要な意味を持つ
※【再掲】送信時間は1msecでも短く
※【再掲】遅延メッセージにしない

JK2XXK/4 > CQ PM66
JH5ZAB > JK2XXK/4 PM63
JK2XXK/4 > JH5ZAB PM66 73 ←これをJH5ZABが受信できた時点でログに載せる(UHMで確認可)

- Rover局等のオペレートの手順は、次のとおり
 @ CQを出す、または誰かを呼ぶ
 A 呼ばれる = 呼んで来た局がCallingMe窓に載る <*11>
 B CallingMe窓内の局をどれか選んで左ダブルクリック
 C To欄に選んだ局のコールサインがセットされる
 D マルチアンサー(複数への一括応答)をする場合、CallingMe窓内の局を更にCTRL+左クリックで選択する(反転表示させる) <*12>
 E 応答メッセージのショートカットをクリック(または対応するファンクションキーを押下)して送信
 F 応答メッセージのデジピート後、UHMで先方の受信の出来不出来を確認
 G-1 UHMでチェック(相手方が受信した)を確認したら、CallingMe窓内にある当該局(複数可)を選択状態にして右クリック
  ⇒ H へ進む
 G-2 UHMでストップ(相手方が受信しなかった)を確認したら、更に応答する
  ⇒ C〜F の手順に戻る
 H メニューから以下のいずれかを選んでログに載せる
  "Log callsign ****"(単独でログに載せる場合、****にはコールサインが入る)
  "Select Line to Log"(複数を一括してログに載せる場合)
 I ログに載せると、載せた局はCallingMe窓から削除される <*13>

- このようにRover局等は、CallingMe窓を注視しながら運用
- 呼ぶ側は、Rover局等のオペレートの手順を踏まえて呼ぶことが肝要

【重要】Rover局等から73を受信したら、更に73やTU等を送るのは控えること
- GCTユーザー、かつ、UHMがONの局は…
  ⇒ 既にログに載っているので、ダメ押しをする必要性は皆無
  ⇒ 更に73等を送る行為は、Rover局等やそれを呼ぶ局にとってはアップリンクの妨げ、つまり他局のQSOを妨害する行為でしかない
  ⇒ 大抵のRover局等は、3-1項の"Do not insert call into CallingMe again after Log"が[有]なので、更に73等を送られても気付かないケースが多い。つまりUHMで自分の送った73の相手方での受信を確認しているので、正直なところ呼んで来た局の73等は気にしていない
  ⇒ どうしても感謝の意を伝えたいのならSNS等を活用しよう

【重要】Rover局等のログへ載るには、一にも二にも「受信」に徹すること
- ログに載る条件を整理すると、以下の通り
 @ Rover局等からの応答(73を含むメッセージ)を受信し、
 A Rover局等・自局ともにUHMがONである
- つまり呼ぶ側が取るべき行動は
 @ シンプルに呼ぶ(メッセージはグリッド4桁のみ)
 A UHMで受信が確認できたら(チェックマークが付いたら)、一切の送信を止める

【重要】Rover局等から応答メッセージが繰り返されるのはなぜか?
- 考えられる理由は次の3つ
 @ Rover局等の側で自身の応答メッセージが受信できていない
  ⇒ しばらく様子を見る
  ⇒ 別の局へ応答し始めたら、ログに載ったと判断して差し支えない
 A UHMのチェックマークが付かない(ストップサインが付く)
  ⇒ 当該局は受信ができていない(偏波面の不一致、障害物が存在、GreenCubeが既にLOS、etcetc...)
 B GCDigipeater(以下GCD)ユーザーからの"73"を要求している
  ⇒ Rover局等によっては「確実に受信」したことが確認できないとNILにするオペレータがいるらしい
  ⇒ GCTユーザーならUHMで確認できるが、GCDユーザーはUHMが使えない <*14>
  ⇒ "73"を受信すると、CallingMe窓のR73列に受信時刻が入る(これがUHMのチェックの代わりとなる)
- 別途告知がない限り、GCDユーザーは状況次第で"73"を送り返した方がいいかも知れない

【重要】Rover局等の応答メッセージには必ず「グリッド(4桁)」「73」を入れる
- 例えば応答メッセージを「R73 TU」「LoTW 73」とした場合、どうなるのか?
  ⇒ 途中からパイルへ参加する局にとっては、Rover局等のグリッドが不明なまま時が過ぎていく
  ⇒ グリッドが不明な場合…
   - Rover局等の仰角やLOSまでの時間がGCTで計算できない
     ⇒ Rover局等がLOSしても、GCT上ではLOSしたことにならない(Dupelist窓では黒字のまま)
   - QSOしてもRover局等のグリッドがADIFへ自動的に取り込めない
     ⇒ 後日、同一グリッドの運用局が登場すると「Grid New」の局として判定されてしまう
- 但しDXCCサービスが主目的のケースや、混み合ったパスでは、この限りではないとも思料
  ⇒ 応答メッセージを「R73」としてアップリンクしやすさを優先するのもひとつの手

*11 3-1項の"Sort CallingMe on time to LOS"にチェックが入っているので、CallingMe窓内は早くLOSする局が上位に来る。呼ぶ側で「呼べばCallingMe窓の上位に来るだろう」と思っている方がもしいるとしたら、それは大いなる勘違いであると個人的には思う次第。また捌く側は、上から順に応答するのがベター。ただ共通窓の狭い局が相手だったり、スケジュールQSOだったりなど、その時々の状況に応じた柔軟な対応が求められるのは言うまでもない。サテライト通信の怖いところは、パスを共有する皆が各オペレータの一挙手一投足を見ている(聞いている)点にあることから、限られた時間内で1つでも多くQSOがなされるよう、捌く側も呼ぶ側もその時々の状況に応じた運用を心掛けたい
*12 この時に選択された局は、To欄へセットされないことに留意されたし
*13 3-1項の"Do not insert call into CallingMe again after Log"にチェックが入っているので、CallingMe窓からいったん削除された局が再びCallingMe窓へ載ることはない
*14 GCTユーザーであってもUHM未対応バージョン(現時点では1.0.89より以前)を使っている場合、インターネットに接続していない場合、3-6項の'Enable UHM'を[無]にしている場合など、何らかの理由でUHMサーバーに接続できていない局は、GCDユーザーと同じ扱いをせざるを得ない

−…−

来月にはFPなどレアアンティティからの運用がありますし、直近ではJA1XGI/6によるPL55からの運用も。みんなで効率の良いオペレートをすることが全体幸福に繋がると思います

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posted by きこり@JH最大の難所 at 11:04 | 岐阜 ☀ | Comment(0) | TrackBack(0) | サテライト | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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